相互理解を理念とした日本語教育のための枠組み

JF日本語教育スタンダード(JFスタンダード)はコースデザイン、授業設計、評価を考えるための枠組みです。
課題遂行能力(言語を使って課題を達成する能力)と、異文化理解能力(お互いの文化を理解し尊重する能力)を育成する実践をサポートし、日本語を通じた相互理解を目指します。

CEFRにもとづく枠組み

CEFR とは、Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment の略です。
2001 年にヨーロッパの言語教育・学習・評価の場で共有される枠組みとして発表されました。以後、世界でも広く外国語教育や評価の場で利用されています。
JFスタンダードは、このCEFRの考え方にもとづいて開発しました。JFスタンダードを用いることにより、日本語の熟達度をCEFRに準じて知ることができます。

JFスタンダードと「日本語教育の参照枠」
文化審議会国語分科会での審議を経て、2021年10月に文化庁が「日本語教育の参照枠(報告)」(以下、参照枠)を公開しました。JFスタンダードと同様に、参照枠もCEFRを参照して開発されています。そのため、両者には以下のような共通点があります。
 ・互いの言語・文化を理解し尊重することや、生涯学習、行動中心アプローチなどCEFRが重視する考えを取り入れています。
 ・「日本語で何がどれだけできるか」という課題遂行能力をレベル指標にし、それを能力記述文(Can-do)で表しています。
 ・レベルはCEFRと共通の6レベル(A1~C2)です。
参照枠に基づく日本語教育を行う際には、JFスタンダードの考え方や教材、教授法を活用することができます。
「日本語教育の参照枠」については、文化庁のサイトをご覧ください。
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93463101.html

JFスタンダードが可能にすること

JFスタンダードをコースデザイン、授業設計、評価などに活用すれば、次のことが可能になり、学習者は学習の継続がしやすくなります。
 ・国や機関が違う教師同士でも、同じ基準で話し合いや情報交換ができます。
 ・教師と学習者が学習の目標を共有することができます。
 ・学習者の日本語力を、他の言語との共通基準にもとづいて説明できます。

ツールとしてのJFスタンダード

JFスタンダードの木

CEFRの考え方に準じて、言語によるコミュニケーションの力を整理し例示したものです。
JFスタンダードの木

JFスタンダードの木の使い方

教育現場に合わせて自由に使えます。 例えば・・
 ・授業設計:授業の目標とする言語活動や、その活動に必要な言語能力を具体的に考えることができます。
 ・学習目標の確認:教師や学習者が、どの部分を目標とするかを確認できます。
 ・学習者を把握:レディネスや、特徴を理解するために使えます。
多様な教育現場に応じて、新しい枝や根を加えたり、取り除いたりするなど、自由に利用してください。

→さらに詳しい説明は利用者ガイドブック1.2にあります

6レベル

JFスタンダードでは、「日本語で何がどれだけできるか」という課題遂行能力をレベル指標にしています。
課題遂行能力はCan-do(「~できる」という文)で表し、JF日本語教育スタンダードの木で示されたカテゴリー(言語能力や言語活動の例)ごとにA1、A2、B1、B2、C1、C2の6レベルに分かれています。この6レベルは、CEFRと共通です。
6レベルの大まかなイメージは、「CEFRの共通参照レベル:全体的な尺度」で確認できます。
技能別のレベル確認にはCEFRの自己評価表が便利です。

→さらに詳しい説明は利用者ガイドブック1.3にあります

Can-do

各レベルで、文法や語彙、漢字などの知識の量ではなく、何がどのぐらいできるかを例示したり、その段階で持っている言語能力を例示したりするのがCan-doです。Can-doを通じて日本語の熟達度や学習目標の把握、共有ができます。
図「Can-doの6レベル」は、「講演やプレゼンテーションをする」という言語活動を各レベルのCan-doで示したものです。

みんなのCan-doサイトへ は、Can-doのデータベースです。言語活動や言語能力のカテゴリー別、レベル別にCan-doの検索、Can-doの編集、保存ができます。

Can-doの使い方

日本語を使って具体的に何ができるのかを人に説明しやすくなります。
・コーディネーター:実社会のコミュニケーション活動を想定したコースデザインができます。
 学習者の日本語能力を把握するためのアンケートを作成することができます。
・教師:授業の目標設定に利用でき、目標に合った評価方法が考えやすくなります。学習者とも共有しやすくなります。
・学習者:日本語の力を自己評価し、目標を立てやすくなります。

→さらに詳しい説明は利用者ガイドブック1.4にあります
→Can-doにもとづく授業案はみんなの教材サイト

レベル別サンプル

レベルをイメージできるように、サンプルを用意しました。評価の目安としてご利用ください。
・話すこと(表現)はB1レベルのみ、話すこと(やりとり)はA2~C1レベルのサンプルを用意しています。
・書くことは、A2~B1レベルの学習者のサンプルを用意しています。

→サンプルはこちら

ポートフォリオ

JFスタンダードでは、CEFRと同じように、生涯学習を重視しています。継続的な学習を支える方法として、ポートフォリオの利用を提案しています。
ポートフォリオは、学習者のニーズ、学習の目的に合わせて、学習の過程、成果を自分で自由に記録・保存するものです。
JFスタンダードは、次の3つの要素で構成したポートフォリオを提案しています。
(1)評価表
(2)言語的・文化的体験の記録
(3)学習の成果 

ポートフォリオ

ポートフォリオの効果

学習者はポートフォリオの活用を通して、日本語の熟達度の自己評価や、それまでの学習過程や成果の共有ができます。
自律的学習能力や学習動機も高めることができます。

→さらに詳しい説明は利用者ガイドブック1.5にあります
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